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芸の道ははてしなく
kotan.exblog.jp

えっ?あれ、アルスじゃないの?

by chiboru
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姉妹
こんこん。
ノックの音。

それに応えるように
どがたん!
… という、床に何かをたたきつける音。
ちょっとして、ぱたぱたという音が近づいてきて扉は開きます。

ちょっと赤くなったおでこをさすりながら、扉から顔を出す魔法士姉さん。
あら、芸人くん、いらっしゃい。

ええと、こたんよね?
ごめんなさい。
あの子、今でかけてるの。
すぐに戻ってくると思うんだけど。
たたみかけるように、早口で言葉を吐き出す魔法士姉さん。
まるで、なにかを気付かれまいとしているみたいです。

でも、その目論見は無駄だった様子。
あの…大丈夫…ですか?
どこかにぶつけたらしいおでこと、
右袖の模様がくっきり浮き上がっている右側のほっぺを見ながら、
芸人くんがたずねます。
え?
なんのこと?
にっこり笑って、あくまで、ごまかそうとするお姉さん。

右腕の袖をよく見ると、なにやら染みのようなものがついています。
芸人くんの視線に気付いて、あわてて腕を後にまわす魔法士姉さん。
時すでに遅しといったところです。

よく寝る人だなぁ。
こないだ来たときも、寝てたっけ。

そんなことを考える芸人くん。

おでことほっぺの異常については、
本人が全力でこの世から消し去ろうとしているので、
これ以上ふれないことにします。
えっと、こたんさんはいつもの露店巡りですよね。
僕、あのあたりを探してみます。
と去ろうとすると
あ、ちょっと待って。

あの子も、もうすぐ帰ってくると思うから、
お茶でも飲んで待っていたら?
芸人くんは、魔法士姉さんのいれたお茶の美味しさを思い出して、
その言葉に甘えることにしました。



 
 
居間に通される芸人くん。
ちょっと待っててね。
すぐ、お茶を入れるから。

このあいだ、いいことがあったから、ちょっといいお茶を買ったの。
これが、美味しくてね~。
といいながら、お姉さんは台所へ姿を消しました。

しばらくすると、う゛お゛っという悲鳴ともうなり声ともとれる声と共に
どんがらがっしゃん
という壮絶な音が聞こえてきます。

芸人くんは、大丈夫かなぁ…と気になりつつも、
さっきのことがあるので、何も聞かなかったことにしました。

しばらくすると、ティセットを載せたトレイを抱えて、
魔法士姉さんは居間に戻ってきました。

さっそく、お茶に口をつける芸人くん。

やっぱり、美味しいなぁ。
いつものお茶も美味しいけど、今日のは格別だよ。
そういえば、こたんにこういうことしてもらったこと無いなぁ。
同じ姉妹でも、こうも違うもんかな。

…と、そこまで考えて、頭に浮かぶこたんの怒った顔。

いや、人には得手不得手があるからね。
こたんはこたんで、いいと思うよ。

あわてて、心の中で言い訳します。


ふと、魔法士姉さんの方に目を向けると、肩に赤い鳥がとまっています。
あれ、これって…
朱雀に育ったんですか?

あ、これね。
ちがうの。
これは、買ったのよ。


一緒に闘ってみて、どうです?
やっぱり、攻撃力は段違いですか?

それがね。
実戦は、まだなの。
どうせなら、+9まで育ててから…と思ってね。

でも、さすが鳥系のペットだけあって、
普通のエサじゃなかなか育たないのよ。

一緒に闘うのは、いつになることやら。
と笑う魔法士姉さん。

芸人くんが切り出します
こないだ、カップル日数が2000日になったんです。
そのときにもらった、バラがあるから使ってください。

あら、気を使わせちゃったかな。
そんなの悪いわ。


いいんです。
どうせ、僕はこのバルキリーしか使わないから、
バラがあっても使いませんから。

それだったら、露店で売ればいいんじゃない?
結構な、収入になるはずよ。

…って、あなたが2000日ということは、ウチのこたんも2000日よね。


はい、一緒にお祝いをもらいに、聖堂にいきましたから。

じゃぁ、いまごろ銀行の中にバラがしまってあるわね。
バラなら、+9もすぐだわ!


え? あれ?
それって、こたんさんのじゃあ…。
それに、売ればお金になるって…。

いいのよ。
あの子ったら、人が一生懸命ためたお金を、
かたっぱしから自分の趣味装備に変えていくんだから。
たまには、貢献してもらわないとね。
視線は遠くを見つめ、力強く、そう言い放つ魔法士姉さん。

その姿を見て
ああ、やっぱりこの人とこたんは姉妹なんだなぁ。
と納得する芸人くんなのでした。
by chiboru | 2008-06-08 23:14 | シィルツ日記