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姉妹
2008年 06月 08日
こんこん。
ノックの音。 それに応えるように どがたん! … という、床に何かをたたきつける音。 ちょっとして、ぱたぱたという音が近づいてきて扉は開きます。 ちょっと赤くなったおでこをさすりながら、扉から顔を出す魔法士姉さん。 あら、芸人くん、いらっしゃい。 たたみかけるように、早口で言葉を吐き出す魔法士姉さん。ええと、こたんよね? ごめんなさい。 あの子、今でかけてるの。 すぐに戻ってくると思うんだけど。 まるで、なにかを気付かれまいとしているみたいです。 でも、その目論見は無駄だった様子。 あの…大丈夫…ですか? どこかにぶつけたらしいおでこと、右袖の模様がくっきり浮き上がっている右側のほっぺを見ながら、 芸人くんがたずねます。 え? にっこり笑って、あくまで、ごまかそうとするお姉さん。なんのこと? 右腕の袖をよく見ると、なにやら染みのようなものがついています。 芸人くんの視線に気付いて、あわてて腕を後にまわす魔法士姉さん。 時すでに遅しといったところです。 よく寝る人だなぁ。 こないだ来たときも、寝てたっけ。 そんなことを考える芸人くん。 おでことほっぺの異常については、 本人が全力でこの世から消し去ろうとしているので、 これ以上ふれないことにします。 えっと、こたんさんはいつもの露店巡りですよね。 と去ろうとすると僕、あのあたりを探してみます。 あ、ちょっと待って。 芸人くんは、魔法士姉さんのいれたお茶の美味しさを思い出して、あの子も、もうすぐ帰ってくると思うから、 お茶でも飲んで待っていたら? その言葉に甘えることにしました。 居間に通される芸人くん。 ちょっと待っててね。 といいながら、お姉さんは台所へ姿を消しました。すぐ、お茶を入れるから。 このあいだ、いいことがあったから、ちょっといいお茶を買ったの。 これが、美味しくてね~。 しばらくすると、う゛お゛っという悲鳴ともうなり声ともとれる声と共に どんがらがっしゃん という壮絶な音が聞こえてきます。 芸人くんは、大丈夫かなぁ…と気になりつつも、 さっきのことがあるので、何も聞かなかったことにしました。 しばらくすると、ティセットを載せたトレイを抱えて、 魔法士姉さんは居間に戻ってきました。 さっそく、お茶に口をつける芸人くん。 やっぱり、美味しいなぁ。 いつものお茶も美味しいけど、今日のは格別だよ。 そういえば、こたんにこういうことしてもらったこと無いなぁ。 同じ姉妹でも、こうも違うもんかな。 …と、そこまで考えて、頭に浮かぶこたんの怒った顔。 いや、人には得手不得手があるからね。 こたんはこたんで、いいと思うよ。 あわてて、心の中で言い訳します。 ふと、魔法士姉さんの方に目を向けると、肩に赤い鳥がとまっています。 あれ、これって… 朱雀に育ったんですか? と笑う魔法士姉さん。あ、これね。 ちがうの。 これは、買ったのよ。 一緒に闘ってみて、どうです? やっぱり、攻撃力は段違いですか? それがね。 実戦は、まだなの。 どうせなら、+9まで育ててから…と思ってね。 でも、さすが鳥系のペットだけあって、 普通のエサじゃなかなか育たないのよ。 一緒に闘うのは、いつになることやら。 芸人くんが切り出します こないだ、カップル日数が2000日になったんです。 視線は遠くを見つめ、力強く、そう言い放つ魔法士姉さん。そのときにもらった、バラがあるから使ってください。 あら、気を使わせちゃったかな。 そんなの悪いわ。 いいんです。 どうせ、僕はこのバルキリーしか使わないから、 バラがあっても使いませんから。 それだったら、露店で売ればいいんじゃない? 結構な、収入になるはずよ。 …って、あなたが2000日ということは、ウチのこたんも2000日よね。 はい、一緒にお祝いをもらいに、聖堂にいきましたから。 じゃぁ、いまごろ銀行の中にバラがしまってあるわね。 バラなら、+9もすぐだわ! え? あれ? それって、こたんさんのじゃあ…。 それに、売ればお金になるって…。 いいのよ。 あの子ったら、人が一生懸命ためたお金を、 かたっぱしから自分の趣味装備に変えていくんだから。 たまには、貢献してもらわないとね。 その姿を見て ああ、やっぱりこの人とこたんは姉妹なんだなぁ。 と納得する芸人くんなのでした。
by chiboru
| 2008-06-08 23:14
| シィルツ日記
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