芸の道ははてしなく
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えっ?あれ、アルスじゃないの?
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背中
兄さまのつくるお料理はとってもおいしいの。
いちばん好きなのは、ムム汁。
でも、さいきんはつくってくれないの。
ムムを狩らなくなったから。

じゃぁじゃあ、わたしがとってくればつくってくれるかな?
うん、兄さまならつくってくれる。
だって、やさしいもの。

シロンの坂のしたで、ムムをいっぱいみたっけ。
あそこなら、わたしでもとってこれるよね。



兄さまのお古のグローブで、えいえいっとムムをなぐれば、
ほら、ひとつ、ふたつ、みっつ。
これだけ、あればたりるかな?

うーん、あとひとつ? うん、あとひとつ。



えいえいっ!
あれ? あれれ?
なんで、こいつしなないの!?
なんで、こんなにいたいの!?
いたっ!いたた…。

足ががくがくする…。
うでにちからが入らない…。なぐれない…。


このまましんじゃうのかなぁ。
兄さまのムム汁食べたかったなぁ。



ああ、兄さまのこえがきこえる。
見えるのは、おおきな背中。
なんておおきな背中。

だいすきな背中。






ボクが鍛冶士になる前のこと。
バイルに襲われて死にかけていた、ボクを助けてくれたのは兄さんだった。

兄さんのハンマーの握りには、ボクのおでこにあるのと同じ三角の傷がある。
ボクを助けたときに、岩にぶつけてできた傷だ。
あの頃の兄さんの実力なら、ボクを襲っていたバイルなんて問題にならなかったはず。
にもかかわらず、
そんな失態-バイルの強さだけを考えれば苦労する相手ではない-をしてしまったのは、
明らかにボクのせいだった。

瀕死のボクに近づこうとする大量のムムを相手に、
あの重いハンマーで立ち向かったのだ。
相手が一体であればあの破壊力は大きなアドバンテージになる。
けれど、敵の数が増えるほど、小回りの利かない巨大な武器は足かせでしかない。
それでも、兄さんはハンマーを振り回し続けてくれた。
バカな妹のために。


あひゃっ!
甲高い奇声に我に返る。

気が付くと、かぼちゃ男がくるくる回りながら近づいてくるところだった。

いけないいけない。
しっかりしろ。
ここはダンジョンの中。
呆けていたら、あっという間にバイル達に囲まれてしまう。

振り切れそうになかったカボチャ男を一撃粉砕で殴り飛ばし、
さらにクルドダンジョンの奧を目指す。

今日こそ、クモガネーゼの傘が手にはいるといいんだけど…。




夜遅くに帰宅すると、兄さんの姿はなかった。

クモガネーゼの傘は、今日も手に入らなかった。
だから、すこしいらついていたのかもしれない。
冷静でいたなら、その不自然さに気付いていたはずだから。

疲れていたボクは、そのままベッドへ倒れ込むと、
そのまま深い眠りにおちていった。


翌朝、目を覚ますと体が悲鳴をあげていた。
変な体勢で寝入ってしまった報いだ。
ゆっくりと伸びをすると、静かに体を起こす。

昨日は、少し頑張りすぎたのかも知れない。
起きたばかりだというのに、疲労感が体を包んでいる。
それでも無理矢理立ち上がると、幾分、意識もしっかりしてきた。
兄さんを起こさなきゃ
兄さんの部屋へ入ると、
いつもとは違う空気が漂っている。
でも、ボクはそれを無視することにした。
考えることが億劫だったからだ。
兄さん、朝だよ。
そういって、兄さんの体を揺さぶったとき、
初めて違和感の原因に気が付いた。

兄さんの両手には布がまかれ、その布には赤いものが滲んでいたのだ。
兄さん!兄さん!
この手はどうしたの?
叫ぶボクの声に、やっと兄さんは目を覚ます。
ああ…これか。
大したことはない。
気にするな。

それより、アレをもってテオ爺さんのところへ行って来い。
爺さんによろしくな。
それだけ言うと、また寝息を立て始める。

兄さんが布にくるまれた手で指し示した先には、
麻の袋が置いてあった。
以前、兄さんが狩りに出かけるときに使っていたものだ。

口紐をゆるめて中をのぞき込む。

そこには、カメレオンの皮が入っていた。
ちゃんと15枚ずつ束ねてある。

部屋の隅に目をやると、
拭っても拭い切れなかった赤茶色のものが
握りの部分にこびりついたハンマーがたてかけてあった。
何年も使ってないのに、いきなり何時間もふりまわすから…。
鍛冶士は、ハンマーをすこしずつ重いものに持ち替えていって、
手を慣らしていく。
そうすることで、重いハンマーを振り回しても、
手のひらはその巨大な遠心力にも耐えられるのだ。

けれど、兄さんはここ数年ハンマーを握っていない。
手のひらが、その重さに耐えきれないのは当然だった。

ボクは、そっと兄さんの手をとる。
寝息を立てている兄さんの顔が、痛みに歪むけれど起きる様子はない。
本当に、疲れているんだね。
兄さんの手のひらを頬にあててみる。
やや熱を帯びた温もりが、布越しに伝わってくる。

とおいむかし、ボクの手を暖めてくれたあの手。
大好きだったあの手は、しっかりとここにあった。
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by chiboru | 2008-06-05 23:16 | 鍛冶娘のひとりごと | Trackback | Comments(0)
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